Metaの取締役に新たに加わるパトリック・コリソン氏とディナ・パウエル・マコーミック氏がもたらすビジネスへの影響とは

テクノロジー業界の巨人、Meta（旧Facebook）が、2025年4月15日付で新たに2名の取締役を迎えることを発表しました。選ばれたのは、オンライン決済サービス「Stripe」の共同創業者でCEOのパトリック・コリソン氏と、金融や政府分野で長年活躍してきたディナ・パウエル・マコーミック氏です。このニュースは、一見すると企業の内部人事のようにも思えますが、実はMetaが今後どのような方向に進もうとしているのかを読み解くうえで、非常に興味深い動きと言えるでしょう。

まず注目したいのは、それぞれが持つバックグラウンドです。パトリック・コリソン氏は、プログラマブルな金融サービスを提供するStripeを兄弟とともに立ち上げた人物であり、スタートアップ支援や経済的機会の拡大に強い関心を持っています。彼自身も「WhatsAppやInstagram、FacebookといったMetaのプラットフォームは、ビジネスにとって非常に重要な存在」と語っており、その視点からMetaが中小企業や起業家をどう支援していくかという議論に貢献することが期待されます。

一方、ディナ・パウエル・マコーミック氏は金融界と政府機関の両方で豊富な経験を積んできました。ゴールドマン・サックスでは16年間にわたりグローバルな投資銀行業務や経済開発プログラムを率い、大統領補佐官や国務次官補としても活躍してきました。彼女が携わった「10,000 Women」や「One Million Black Women」といったプロジェクトは、多様性と経済的包摂（インクルージョン）を推進するものであり、その知見がMetaの社会的責任や国際展開にも影響を与える可能性があります。

このような人材を取締役会に迎えるという決定は、Metaが単なるSNS企業から脱皮し、より広範な経済活動や社会課題への関与を強めていこうとしている姿勢の表れとも受け取れます。特にここ数年、Metaはメタバース構想への注力など、大胆な方向転換を図ってきました。その一方で、中小企業向け広告サービスやeコマース機能など、「現実世界」で収益基盤となる事業も維持・強化しています。今回の人事は、その両輪を支えるための布石とも言えるでしょう。

振り返れば2023年には、大規模な人員削減と組織再編が話題となりました。また2024年にはAI分野への投資拡大と共に、中小企業向けツール群（Business Suiteなど）のアップデートも行われています。これら一連の動きから見えてくるのは、「未来志向」と「足元強化」のバランスを取ろうとするMetaの戦略です。そして今回、新たな取締役2名が加わることで、その戦略実行力がさらに高まることが期待されます。

総じて言えば、このニュースは単なる人事異動ではなく、Metaという巨大企業が次なるステージへ進むための準備段階とも言える出来事です。テクノロジーと金融、そして政策という異なる分野から来た2人がどんな視点で議論に参加し、どんな変化をもたらすか。その答えはすぐには見えてこないかもしれませんが、中長期的には私たちの日常にも少しずつ影響してくる可能性があります。今後も静かに注目しておきたい動きです。